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オーナーシェフの河瀬です。

洗い場物語 第一話

飲食店の『洗い場仕事』と聞いて皆さんはどんなイメージを持たれるだろうか?

 

『新人がやる雑用でしょ。』

と思われた方…その通り。

 

『洗い場』からスタートを切った料理人は多いはずだ。

 

『洗い場』は奥が深い…

『洗い場を笑うもの、洗い場に泣く』という格言もある(ない)

 

洗い場は飲食店の心臓部。その裏側には壮大な物語がある。

 

今日はそんな『洗い場』のはなし。

 

 

19歳の夏。僕は初めて洗い場に立った。居酒屋でのアルバイトだった。

 

小さなお店で、洗い場もめちゃくちゃ小さかった。洗浄機もなし。だから、引き上げてきた洗い物は一瞬でシンクを埋めてしまう。

店が狭く洗い物を置いておく場所がないため、シンクに入りきらない洗い物はカゴに入れて店の外にいったん持っていき、手が空いたら洗う。そんな感じ。洗い場環境としてはかなり劣悪であった。

 

初めての飲食店アルバイトで慣れないことも多く、僕は緊張から皿を割りまくった。

焦ってしまい更に割った。かなりひどかった。

洗い場の仕事がまともに出来ないと、なかなか次の仕事を振ってもらえない。

 

店が忙しくなると、何も出来ない僕は洗い場に追いやられる。洗い物しか出来ることがない。それすらまともに出来ない。

そんな僕を見た先輩から『お前は洗い物しにこの店きてるんか?』と言われてめちゃくちゃ悔しかったのを今でも覚えている。

 

店長からの当たりも冷たく『仕事のできないネクラなやつ』と思われていたように感じる。

バイトに行くのが嫌で仕方なく、仮病を使ったり無断欠勤したりと酷かった。

 

しかし、バイト先に好きな女の子ができたことをキッカケに、僕はやる気全開で頑張った。洗い場どころか料理に接客、ドリンク場と全ポジションを精力的にこなした。

自分で言うのも恥ずかしいが、その店ではエース的なところまでいったと思う。男とは至極単純である。

 

 

話が逸れてしまったが、ここで大切なことに気づく。

 

最初のステージである『洗い場』の仕事は先輩や店長から確実に見られている。

ここでアピールができるか否か?は、今後の仕事に影響する。

 

洗い場仕事が見られるのかはなぜか?

それはここに仕事の基礎が詰まっているからだ。

 

洗う食器の優先順位をつけらているか?

汚れはしっかりと落とせているか?

水や洗剤を無駄遣いしていないか?

無駄な動きがないか?

食器の扱いは丁寧か?

割ってしまった時の対応は?

などなど…

 

これは洗い場仕事だけに言えることではない。『雑用』と言われる仕事には往々にして仕事の基礎が詰まっている。

そういった点で『洗い場の仕事』は奥深い。

その人の仕事に対する考え方や性格が出る。

 

例えば『効率よく早く終わらせたい』と思っている人は、別の仕事に対してもこう考える傾向がある。

 

つまり『洗い場仕事(雑用仕事)』は『性格判断』に使われるということだ。

 

だから店長や先輩は、その人がどんなふうに洗い場仕事(雑用仕事)をするかを見ている。よーく見ている。

ここに気づき、クオリティの高い雑用をすることで信頼ポイントが貯まり、次の仕事を振ってもらいやすくなる。

 

逆に雑用仕事を馬鹿にして、ダラダラとやる人に次はない。一生雑用仕事で終わり。これは非常に恐ろしい。

 

つまり洗い場仕事はアピールする場なのだ。

見られているからこそ、きっちりとやれば『コイツ…デキる!!』と思ってもらえる。その逆も然り。

 

いやぁ、洗い場ってホント面白いものですね。

 

つづく…